一ヶ月前のことになりますが、9月5日に台湾中央研究院台湾史研究所で開催された「比較殖民地主義與文化 國際學術工作坊」に参加してきました。英語表記は”International Workshop on Comparative Colonialism and Culture”、日本語は「国際ワークショップ 植民地主義と文化:比較の視座」。三言語表記があるように、日本統治期の台湾について、複数の視点から論じようというものでした。私に割り当てられたのは「殖民主義的漢文脈(植民地主義の漢文脈)」というセッション。歴史系・思想系の研究者が中心なので、文学系の私はちょっと異質でした。
これまで台湾は文献調査や研究発表で何度も訪れているのですが、日本統治期の問題を取り上げて発表するのは初めてです。資料も一から当たらねばなりません。さいわいハーバードで必要なものには目を通すことができたので、何とか報告原稿を作って参加しました。「漢字圏植民地と近代日本文語文」というタイトルでエントリーしたのですが、仕上がった内容からすれば、「漢字圏植民地における漢詩文と文語文」とすべきだったかもしれません。
ボストンからの往復は、乗り継ぎの待ち時間を含めると片道24時間を超えるもので、さすがにつらかったです。準備もそれなりにたいへんで、自分なりの視点を出すまで時間がかかりましたから、引き受けたことをまったく後悔しなかったわけではありません。でも、収穫はそれ以上でした。討議をする中で、台湾近代という時空が、近代東アジアの漢文脈ないし漢字圏というものを考える上で、たいへん重要な位置にあることがよくわかりました。また、近代日本が台湾という地を統治したことの位置づけについて、一歩進めて考えることができたように思います。多少の無理はしてみるものだな、と思いました。さすがにボストンへの帰途はへろへろになりましたけど。
アメリカから台湾に来ると、日本では見かけない(たぶん)Au Bon PainがStarbucksと並んで桃園空港にあったり、宿舎の洗濯機がボストンのアパートとまったく同じ方式だったり、緑茶がアメリカと同じように甘かったりすることに目が向きます。それもまた、小さな発見でした。もちろん、鹹豆漿も胡椒餅も相変わらずの味で、書店巡りも堪能しました。それが私にとっての「いつもの台湾」です。でも今回は、もう少しいろいろな姿が見えてきました。この土地そのものについて、きちんと考えようという意識が生まれたようです。
だからというわけではありませんが、断りにくい依頼が重なり、11月にまた台湾に行くことになってしまいました。しかも中旬と月末の2回です。ちょっと強行軍ですが、鉄は熱いうちに打てとも言いますし、がんばってみます。
台湾、不思議なところですよね。先生のレクチャーは聞いてみたかったです。
台湾でヒマがありましたら、ご紹介したい人がいます!
コメントありがとうございます。会議中はペーパーが中央研究院のサイトにアップされていたのですが、いまは入れないようです。会議日程はhttp://www.ith.sinica.edu.tw/index.phpから見られます。日本に帰国したらまたお話しましょう。