いつの間にか、ハーバードに来て、一ヶ月が経ってしまいました。調べ物をしたり、原稿を書いたり、そんなこんなしているうちに、もう八月も終わりです。ボストンは爽やかな風が吹いて、新入生たちのオリエンテーションツアーも始まっています。在校生たちもキャンパスに戻りつつあるようです。
駒場にいるときのように個人研究室を提供されているわけではないので、仕事場は図書館です。ハーバードにはたくさんの図書館があって、どこでもハーバードIDで入れるのですが、お気に入りは三つ。一つは、Harvard-Yenching Library 。東アジア研究の拠点であるHarvard Yenching Instituteの図書館です。日本語や中国語の資料が充実しています。閲覧室の他に、書庫の中のキャレル(個人用デスク)も登録してあるので、便利です。二つめは、Widener Library 。ハーバードの中央図書館ともいうべき最大規模です。ここにもキャレルを登録してありますが、HYLに比べて机が広くて窓もあってデスクランプも明るいので、資料をもちこんで原稿を集中して書きたい時に使います。英文資料なら不自由しないので、それを読みむときも、こちらです。閲覧室もいくつかあるので、気分によってそちらで勉強したりもします。三つめは、Law School Library。キャレルはロースクール所属に限られるので、私は使えないのですが、閲覧室が快適です。隣の建物にはカフェテリアがあり、図書館が閉まったあとも勉強できるスペースがあって、助かります。駒場のコミプラみたいなものですね。
それぞれの図書館は、閲覧室の形状もさまざまです。たとえば椅子。HYLの閲覧室の椅子は何とアーロンチェア。ただ、デスクランプがなく、パソコン用のコンセントも少ないのが難点です。Widenerは座面の広い木の椅子。閲覧室によってクッション付きとそうでないのがあります。デスクランプやコンセントは完備。LSLは、天井の高い四階の閲覧室が木の椅子、そうでない二階の閲覧室がハイバックのデスクチェア。四階は開放的な空間、二階は集中して仕事をしなさいという空間です。何と言うか、サンドイッチを買おうとして、パンはホワイトかブラウンかライか、チーズはどうするのか、ベーコンかソーセージか、と何でも選択肢を示すアメリカらしいと言えばらしいでしょうか。
環境もさることながら、図書の閲覧・貸出のシステムも、快適です。保存用書庫にある書籍もけっこうありますが、webで検索してそのまま申し込むと次の日には自分の都合のよい図書館のカウンターで借り出せます(冊数は無制限。期間は学生だと四週間。教員は学期間)。連絡はメールで来ます。夕方に、あ、これは、とリクエストして、翌日の朝にはもうメールが来ていた時には、感心するというか驚いてしまいました。すぐに真似できるはずもないのですが、せめて本郷と駒場でそんなやりとりができたらいいのになあ、と思ったことです。